車両保険は必要か、不要か。
対人賠償保険や対物賠償保険と違って、車両保険は入るか入らないかを選べる保険会社がほとんどです。当然、入ると保険料が高くなるので、入らなくても良いんじゃないかと思う人が多いのではないでしょうか。
実際のところ、車両保険は必ず加入すべき保険ではありません。ここでは、車両保険について種類や補償内容、加入を検討する目安などをお伝えします。
車両保険とは
車両保険とは、自分の車の修理費用や買い替え費用などを補償してくれる保険です。
例えば、車を盗難された、いたずらされたといったものや台風や洪水で車がダメになったといったものから、ガードレールでこすったり電柱に衝突したりといった自損事故まで、幅広く補償されます。
ただし、車両保険の中に種類があり、種類によって一部の事故が補償されないものもあるので注意しましょう。
車両保険の種類
車両保険には一般型とエコノミー型(車対車+限定A)があります。
一般型とエコノミー型には補償される事故に違いがあり、エコノミー型(車対車+限定A)は補償対象が限定されています。
どちらでも補償される事故は以下となります。
- 盗難
- いたずら
- 他の自動車との事故
- 火災
- 台風や洪水など自然災害の一部
一般型では補償され、エコノミー型(車対車+限定A)では補償されない事故は以下のとおりです。
- 当て逃げ事故
- 自損事故(ガードレールや電柱への衝突など)
- 転落事故
- 自転車との接触事故
補償される事故が限定されるので、エコノミー型(車対車+限定A)のほうが保険料は安くなります。
車両保険は必要?不要?
そもそも車両保険は必要なのでしょうか。不要であれば、加入しないぶん保険料が安くなるので、入りたくないという人も多いでしょう。
先に結論から言ってしまうと、契約者(被保険者)、契約車両によって車両保険は入ったほうが良い場合もいらない場合もあります。ですから、メリットとデメリットを考えて、自分には必要かどうかを考えることが必要です。
実際に、自動車保険の大手であるソニー損保でも車両保険の加入率は52%(一般型41%、エコノミー型11%)と、半数程度にとどまっています。
相手の対物賠償保険で補償されない部分を補償してくれる
相手のいる車対車の事故の場合、自分の車の修理費用なんかは相手が加入している対物賠償保険から保険金が支払われます。
でも、相手の対物賠償から補償されるのは、あくまでも過失割合に応じた金額です。例えば、修理費用が100万円で自分の過失割合が80%の場合、相手の対物賠償から支払われるのは20万円で残りの80万円は自己負担となります。
この自己負担部分を保険金の支払限度額の範囲内で補償してくれるのが車両保険です。
例に挙げたケースのように、修理費用が高額になる可能性の高い車種に乗っている場合は、メリットが大きいと言えます。
自損事故や当て逃げ事故でも保険金を受け取れる
また、一般型の車両保険にかぎられますが、自損事故や当て逃げ事故でも保険金を受け取れることもメリットでしょう。エコノミー型の場合は補償対象外なので、あくまでも条件付きのメリットと言えます。
自損事故の場合は、相手がいないので自分の車の修理費用はすべて自己負担です。また、当て逃げ事故も相手が不明なので損害賠償請求ができず、結果としてすべて自己負担になってしまいます。
こういった他の保険などからの補償を期待できない事故をカバーして補償してくれます。
ここまではメリットについて挙げました。他の保険で補償されづらい部分を補償してくれるところは車両保険のメリットです。逆に、デメリットは何でしょうか。
保険金額は自分で設定できない
車両保険で支払われる保険金のことを車両保険金額と呼びます。対人賠償や対物賠償と違い、車両保険金額は自分で設定することができません。
車両保険金額は、車種や型式、年式をベースに算定されます。
新車購入時は基本的に購入金額と同額の車両保険金額が設定されますが、車両価値は年々下がっていもの。ですから、毎年一定ではなく保険更新時に見直されて金額が下がっていきます。
購入から時間が経過し、車両価値が低くなっていると、設定される保険金額もそのぶん低くなるので、補償という点では変わらないかもしれませんが、金額という点では自己負担したほうが保険に加入するよりも得なのではないかというケースが出てくるでしょう。
車両保険を使うとノンフリート等級がダウンする
他の保険と同様に、車両保険を使ってもノンフリート等級はダウンします。当然、次回の契約更新時に保険料が高くなります。
車両保険の場合は、事故の内容によって下がる等級が異なります。
車両保険の等級ダウン事故の例
3等級ダウン
- 他の自動車との事故
- 当て逃げ事故
- 自損事故(ガードレールや電柱への衝突など)
- 転落事故
1等級ダウン
- 盗難
- いたずら
- 火災
- 台風や洪水など自然災害の一部
「ノンフリート等級とは? 自動車保険料に影響する等級制度をご紹介」の等級ごとの割引率(割増率)一覧を見てもらうとわかりますが、等級ごとの割引率の差は大きいです。当然、ノンフリート等級による保険料に適用される割引率(割増率)は、車両保険だけでなく加入している保険全体にかかってきます。
ちょっとした修理費用で、安易に車両保険を使ったら、翌年度の保険料が大きく上がってしまった……。
車両保険金額が最大でも新車の車両価格になるので、受け取る保険金よりも使うことによる保険料の上昇幅がかなり大きくなりえるのはデメリットと言えるでしょう。
加入を検討する目安
新車購入から3年程度まで
上で述べたように、車両保険金額は車両価格に応じて設定されるのですが、車両価格は年々下がっていきます。
そのため、購入後そこそこ期間を経過している車両だと、支払われる保険金や保険適用することでダウンする等級による保険料の上昇を考えると、車両保険に加入すると逆に損をしてしまうことになってしまいます。
車両価値に関しては中古車査定・買取サイトに掲載されているデータや買取実績を参考にしてみても良いと思います。
例えば、このサイトで見ると、プリウスは購入後3年までは7割程度の価格で売却できていますが、4~5年で約半値、6年以降では3割以下です。
他の車種も似たような傾向にあるので、新車購入から3年程度では車両保険に加入しても良いでしょう。車種によりますが、車両価値が高ければ4~5年までは検討しても良いのではないでしょうか。
高級車両に乗る
高級車両や外国産車など、車両価格の高い車両に乗る場合も、車両保険に入ったほうが良いでしょう。
車両価格が高いので、車両保険金額も高くなるからです。修理費も高額になることが多いですし、万が一盗難された場合の補償も大きく、加入するメリットは多いと思います。
ただし、保険会社は万が一の場合に支払う保険金が高額になる可能性が高いです。
そのため、車両価格の高い高級車両の場合、保険会社から加入を断られることもあります。その場合は、仕方ないでしょう。
カーローンなどで車を購入し、ローンが残っている
ローンを組んで車を購入しているということは、まとまった資金を持っていない人が多いのではないでしょうか。
そう考えると、修理費用や買い替え費用を自己負担するのは難しいと思います。
ちょっとした修理であれば自己負担でも問題ない。でも、修理する費用が出せずに運転できなくなったり、廃車になったりしても、ローンの支払いは続けなければいけません。
そのため、ローンが残っている期間中は、最悪の場合を想定して車両保険に加入しておいたほうが良いかもしれません。
車両保険で保険料を抑えるには
一般型ではなくエコノミー型(車対車+限定A)を選ぶ
補償範囲を限定することで保険料を抑えることができます。
ただ、一般型でしか補償されない事故をカバーしなくて良いかどうかについて、慎重に検討したほうが良いでしょう。
自損事故や転落事故、自転車との接触事故なんかは、自分自身が安全運転を心がければ回避できるかもしれません。でも、当て逃げ事故は、自分が注意していたら回避できるでしょうか。
他の自動車との事故であれば、過失割合に応じて相手方からも補償を受けられます。車両保険に加入していなくても、最悪自分の過失割合分を自己負担すれば良いのですが、当て逃げ事故は相手が不明なので、修理費などは全額自己負担になってしまいます。
そう考えると、この方法で保険料を抑えることはあまりおすすめできません。
免責金額を設定する
車両保険は、免責金額と呼ばれる自己負担分をあらかじめ設定しておくことができます。
例えば、免責金額を10万円で設定していたとすると、車両の損害が50万円で車両保険を使う場合に10万円は自己負担して、残りの40万円が補償されるということになります。
免責金額は車両保険で補償されない金額になりますから、免責金額を設定することで保険料を安く抑えることが可能です。
詳しくは「車両保険の免責金額とは?いくらに設定するのが良い?」をご覧ください。
車両保険を使わない
車両価値の高い新車に乗っているから車両保険に加入したとしても、必ず保険を使わなければいけないわけではありません。
事故にあった場合に何でもかんでも車両保険を使うのではなく、修理費用が安く済む場合は自己負担するようにしましょう。
自己負担で修理するといっても、リサイクルパーツなどを買って自分で修理するのは極力避けたほうが良いです。売却する場合にマイナスの査定になる可能性があるので。とりあえず、自己負担するにしろ、修理工場に相談することをおすすめします。
まとめ
以上、車両保険について解説しました。
車両保険で一番大きいところは、保険金額が自分で設定できないことだと思います。でも、他の保険と同様に当然ですが保険料を支払わなければいけませんし、使うと等級がダウンします。
ですから、保険に加入する負担、使う負担と支払われる保険金は、人によってバラバラです。一概に車両保険は必要だとか、不要だとかを言うことはできません。
自分が乗っている車両の価値を調べてみて、万が一の場合に車両保険を使ったほうが良いかどうかをシミュレーションしてから、加入を検討したほうが良いでしょう。