相手がいる交通事故の場合、必ずしもどちらか一方の過失で事故が起こるわけではありません。
例えばお互いの不注意が原因で事故が発生したケースもありますし、シートベルトを着用していなかったために被害が大きくなったというケースもあります。
損害賠償額を決定する上では、どちらにどの程度の過失があったのかを数値化する必要があります。それが過失割合です。
ここでは交通事故の過失割合について、そして損害賠償上の過失相殺についてご紹介します。
交通事故の過失割合とは
交通事故ではどちらか一方が加害者で、他方が被害者となるわけではありません。どちらにも過失がある場合がほとんどです。
どちらにどのぐらいの過失があるのかを表したものを過失割合といいます。
この過失割合ですが、基本的には過去の裁判の判例を参考に決めます。
交差点内で直進車と右折車が衝突事故を起こした場合を例に挙げると、その交差点に信号がなければ右折車の過失割合が高くなります。信号があると、赤信号になっていた車両の過失割合が高くなります。
車と歩行者との事故では、歩行者に過失は生じないと思っている人がいるかもしれません。しかし、横断歩道以外で道路を横断したり、横断歩道を黄色や赤信号で横断したりして事故が起こった場合は、歩行者にも過失が生じます。
同じ場所で発生した事故でも、シチュエーションで過失割合が変わります。ですから、裁判所が過失割合を決定するのではなく、過去の判例を参考にして保険会社や事故の当事者同士が示談交渉で過失割合を決めることが多いです。
損害賠償上の過失相殺とは
過失相殺とは、交通事故で双方に過失がある場合に、その過失割合に応じてそれぞれに損害賠償責任を負担させるという考え方です。
事故の相手が自動車保険に加入していると、被った損害に対して相手が加入している対人賠償や対物賠償保険で保険金が支払われます。では、損害額が100万円だからといって単純に100万円の保険金が支払われるのかというと、そうではありません。
自分の過失分は自己負担しなさいということで、過失割合に応じて保険金は減額されます。
過失割合に応じて損害賠償額が減額される
過失割合が100対0で被害者の過失がない場合は、被害者の損害額全額が損害賠償額となります。
しかし、少しでも被害者に過失があれば、損害賠償額は過失割合に応じて減額されることになります。過失割合が30だと損害賠償額の30%、過失割合が50%の場合は損害賠償額の50%というように目減りするのです。
事故によって車の修理代が100万円かかったとします。過失割合が20%の場合は、相手から80万円支払われますが、残りの20万円は自己負担になります。相手が支払限度額を無制限にした対物賠償に加入していたとしてもこの割合は変わりません。
このケースのように、自分にも過失があるために車の修理代で自己負担が発生。その自己負担を避けるためには車両保険に加入するという方法があります。
過失割合が高い場合は自賠責も受け取れる保険金が減額される
受け取れる保険金の減額は任意保険にかぎりません。場合によっては、自賠責でも受け取れる保険金を減額されます。
自賠責は被害者救済のために加入が義務付けられている保険。その自賠責でも損害賠償額が減額されるのは、被害者に重大な過失(重過失)がある場合です。
交通事故でけがを負った場合は、過失割合が80%以上で20%の減額です。80%未満であれば減額されません。
死亡や後遺障害の場合は、過失割合によって減額幅が異なります。
70%以上80%未満の場合は20%の減額、80%以上90%未満の場合は30%の減額、そして90%以上100%未満の場合は50%減額。最大で補償される金額から50%の減額です。
ちなみに、どういう被害があった場合でも、過失割合が100%では自賠責では補償されません。
過失割合がゼロだと保険会社が示談交渉できない
過失割合が生じると損失に対して自己負担が発生するので、避けたいと思うのは当然です。だからといって、過失割合がゼロでも良いことばかりではありません。過失割合がゼロだと保険会社が示談交渉をおこなうことができないのです。
示談交渉をおこなえるのは、当事者か弁護士です。保険会社は示談交渉を代行することは法律で禁じられています。
「でも、事故を起こしたら保険会社が示談を代わりにしているんじゃ……?」と思うかもしれません。
被保険者にも過失があれば、保険会社は被保険者の損害賠償を補償するので、被保険者の代わりに損害賠償金を支払うことになります。つまり、過失がある場合は、保険会社は示談交渉を代わりにこおこなうのではなく、当事者として示談交渉をおこなっているのです。
ですから、過失割合がゼロだと保険会社は当事者にならないので、示談交渉の場につくことができません。
自分の過失割合がゼロの場合は、相手側から保険会社の担当者が示談交渉の場に出てきたとしても自分が対応する必要があります。
もしそういうケースで自分がきちんと交渉できる自信がないというのであれば、保険会社が弁護士費用等を一定額負担してくれる弁護士特約(弁護士費用特約)を付帯しておくと良いでしょう。
また、日弁連交通事故相談センターで相談してみるのも良いでしょう。
日弁連交通事故相談センターは日本弁護士連合会(日弁連)が交通事故の被害者救済を目的として設立した機関。相談回数に限りがあったり、直接示談交渉はしてもらえなかったりしますが、交通事故事案の経験が豊富な弁護士に無料で相談することができます。